電力系統 · 保護とアークフラッシュ
事故除去
私たちがモデル化した2N構成のデータセンター給電系統。どの盤で事故が起きても、どの遮断器がそれを除去するか、そして商用給電時と発電機給電時にアークフラッシュ境界がどこまで及ぶかを示します。
概要
参照モデルとして想定した2N構成のデータセンター給電系統のうち、片系統をモデル化しました。10 kVの受電点、2.5 MVA変圧器、2.5 MVA予備発電機、LV(低圧)主配電盤、分電盤(以下「分電盤B」)、そしてサブ分電盤です。各盤で事故を発生させました。短絡電流はIEC 60909-0:2016の手法に従います。経路上のすべての保護装置は、汎用的な特性とその許容差帯で動作します。LV遮断器は長限時・短限時・瞬時、MV(高圧)リレーは普通反限時です。入射エネルギーはIEEE 1584-2018のモデルに従って推定したもので、PPE(個人用保護具)の検討ではありません。
発電機給電時には、事故電流は一定にとどまりません。発電機に特有の減衰をたどり、23.4 kAから、励磁で維持できる定格電流の約三倍へと下がっていきます。そのためトリップユニットが受けるのは減少していく電流であり、私たちは事故を半ミリ秒刻みで追跡します。引外しの進行、アーク電流、入射エネルギーはいずれも、電流が下がるのに合わせて積分します。分電盤Bでは、発電機の事故電流は商用電源の半分で、そのアーク電流(最大15.7 kA)はフィーダ遮断器の瞬時引外し値を下回るため、遮断器は0.3 sの短限時遅延を待つことになります。除去時間は50 msではなく320 msです。作業距離での入射エネルギーは2.2から4.7 cal/cm²に上がり、境界は0.89 mから1.44 mへ広がります。
この結果は瞬時引外しの設定値の位置に左右され、私たちはその点も明記しています。設定値がもっと高いか、瞬時引外しを無効にすると、商用給電時も短限時で除去されるようになり、こちらのほうが悪いケースになります。主配電盤では、いずれにせよ商用給電時のほうが悪いケースです。保守用設定にすると、発電機給電時の分電盤Bは50 ms、0.54 mに戻ります。ただしこの設定が有効な間は、サブ分電盤で事故が起きると、サブ分電盤自身の遮断器が除去する前にフィーダが引き外す可能性があります。これが速い引外しの代償です。
開発内容
- IEC 60909-0:2016の手法による給電系統の短絡モデル。pandapowerと独自のインピーダンス計算コードの両方で構築しました。両者は1e-13 kA以内で一致し、pandapowerはIEC TR 60909-4の参照系統を0.1 A以内で再現します。
- 発電機の減衰モデル(初期過渡、過渡、その後は励磁による電流維持)。IEC 60909-0の遮断電流係数μと比較しました。
- 独自のトリップユニット:LVの気中遮断器と配線用遮断器向けの汎用的な長限時・短限時・瞬時要素と、IECの普通反限時特性をもつMVリレー。それぞれが時間とともに変化する電流に対して引外しの進行を積分し、許容差帯の速い側と遅い側の端を扱います。組ごとに、完全短絡電流とアーク電流の両方で選択遮断を確認しています。
- IEEE 1584-2018モデルの独自実装。減衰していくアーク電流にわたって、通常のアーク電流と低減アーク電流の両方について積分します。公表されているAnnex Dの計算例と、IEEE計算ツールの105,120ケースで検証し、オープンソースのarcflashライブラリとも照合しました。
- 時間を引き延ばした3Dの電気室とインタラクティブビュー。盤、電源モード、保守用設定を選んで事故を再生し、その時間–電流特性帯を開けます。
技術スタック
短絡、保護、入射エネルギーの各モデルにPython(pandapower、NumPy)。電気室の描画にthree.js、インタラクティブビューにCanvas 2D。
数値
| 数値 | 測定方法 |
|---|---|
| 45.7 kA → 23.4 kA | 分電盤Bでの完全短絡時の初期対称短絡電流で、商用給電時と発電機給電時の値です。IEC 60909-0:2016の手法(c = 1.10)によります。発電機の電流は、遮断器が除去する時点までに11.8 kAまで下がります。 |
| 50 ms → 320 ms | 分電盤Bでの除去時間です。アーク電流にわたって積分したトリップユニットのモデルから、各許容差帯の遅い側の端を用いて求めました。 |
| 2.2 → 4.7 cal/cm² | 分電盤Bから610 mmでの入射エネルギーで、IEEE 1584-2018のモデルに従い、0.5 ms刻みで積分しました。電極配置VCB、ギャップ32 mm、筐体508 mm。推定値であり、PPEの検討ではありません。 |
| 0.89 m → 1.44 m | 分電盤Bでのアークフラッシュ境界(1.2 cal/cm²)で、商用給電時と発電機給電時を比べたものです。同じ積分から求めました。 |
| 0.54 m | 保守用設定を有効にした、発電機給電時の分電盤Bでの境界です(3.2 kAを超えるとフィーダが瞬時に引き外し、50 ms)。 |
| 20 ms 対 25 ms | 保守用設定が有効な状態でサブ分電盤に事故が起きた場合の、フィーダ遮断器の最速の引外しと、サブ分電盤の遮断器の最も遅い除去との比較です。フィーダが先に引き外す可能性があるため、選択遮断が失われます。 |
| 19.2 kA | フィーダの瞬時引外しの設定値です(12 × 1600 A、±10%)。主な結論が成り立つのは、この値が発電機のアーク電流(最大15.7 kA)と商用電源のアーク電流(最小22.6 kA)の間にある場合です。感度分析では、設定値を15 × Inにするか無効にすると、結果が逆転します。より弱い系統(100 MVA)や80 mのフィーダでも同様で、これらは商用電源のアーク電流を設定値より下げてしまいます。 |
| 105,120ケース | IEEE 1584-2018の計算スプレッドシート(オープンソースのarcflashリポジトリに収録されたもの)のケースで、私たちの実装はすべてを0.0003%以内で再現しました。 |
| 0.1 A | pandapowerのIk''と、IEC TR 60909-4の参照値(母線10)との最大偏差です。参照値には、pandapower自身のテストファイルにあるものを用いました。 |
| μより15–23%低い | 20–250 msにおける私たちの発電機減衰モデルを、同じ機械に対するIEC 60909-0の遮断電流係数μと比べたものです。μは安全側の包絡値です。代わりにμに合わせて時定数を当てはめると、分電盤Bでの発電機ケースは5.7 cal/cm²に上がります。 |
| 約3 sで積分22回 | 通電状態の事故ケース11通り(盤 × 電源 × 保守用設定)について、それぞれ通常のアーク電流と低減アーク電流を0.5 ms刻みで積分し、さらに選択遮断の確認と二回の短絡計算を加えたものです。他の処理と共用しているApple M1 ProのノートPCで、全体の実行あたり2.2–3.5 sでした。 |
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